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ジブリとゴヤ

私は高校では理系のクラス、大学も工学部、就職先も製造メーカーという文学とは無縁の世界で生きてきました。

そんな環境だと周りの友達は全員アニメオタクで、と言っても大抵の人は宮崎駿や庵野秀明といったクリエイター本人にはそんなに興味が無く寧ろオタクじゃない人の方が、宮崎駿が堀田善衛を尊敬していることを知っているような気がします。

スペイン語の勉強を始めてspotifyでスペイン語講座を聴いていると、偶然(?)レコメンドにジブリの鈴木敏夫がやっているジブリ汗まみれが出てきて、聞いてみると宮崎駿が堀田善衛について講演している回でした。(2008/10/21 乱世の羅針盤…堀田善衞を敬愛する宮崎駿のことば)

そこで初めて堀田善衛がスペインについての本を出していることを知って、最初に買ったのが「ゴヤ」です。

自分の世代は理系だと高校でも大学でも世界史を習わなくて済ませられたので、つまり中学生並みの知識で読むゴヤは近代スペインの歴史を追っているようで語学抜きに面白い国なんだという印象を持ちました。

スペインに対しての文明の辺境に在るという彼の視点は疎い私が考えてもやはり日本と何処か立ち位置が似ていて、スペインの政治ニュースを見る場合に日本っぽいなと親近感を持てるようになりました。

本を読んだ後に後日談的に あなたは作家 堀田善衛を知っていますか? を聴くとアルバ侯爵の家に飾ってる絵を見るために3年かかった等、裏話が多く聞けて楽しめるかと思います。

 

確かに私は楽しく読めたのですが、冷静に考えて売れるわけなさそうな内容であることは素人の私だけでなくプロの人達も認めていて、例えば2018/11/25 堀田百合子さんとのトークイベント(後編) で娘の堀田百合子さんがヘンテコな本が売れる変な時代があったと面白おかしく回想しています。

最も、奥さんに文士の癖に商売上手と言われるだけあってゴヤ以外にも

アンダルシーア大巡礼(el Rocío)の描写が印象的な「スペインの沈黙

とにかくスペインは住むのが大変そうな「オリーブの樹の蔭に スペイン430日

スペイン内戦で現場で戦ってるやつは金のないイタリア人同士という話が強烈な「バルセローナにて

散々暑いだの寒いだの岩しかないだの言いながらやっぱりいい場所だったんだなと写真で分かる「カタルーニア讃歌

と他にも沢山のスペインにまつわる本を書いています。

 

これらの本は堀田善衛の才能はもちろんですが、円本から始まる読書バブル、数十倍に広がった日本との経済格差と幾つかの要素が偶然重なったお陰で後世の日本語が読めるスペイン好きの資産になったのだと思います。

お金は全部消えたけど。

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