ベラスケスの卵、Huevos rotosについて
スペイン料理と言えばPaella、Ajillo、Gazpachoと有名なものが沢山あるのですが、もう少し詳しく調べていくとHuevos rotosなる料理がよく挙げられています。
最初に調べた時は画像を見て卵とジャガイモがあれば良くって、実際そうなのですが、余りに単純そうなのでレシピも見ずにジャガイモをレンチンしてその上に目玉焼きをのっけて食べていました。
加えて告白するとrotosをtorosの事だと思ってて、挙句の果てにはtorosなんだから何か肉が入っていれば良いのだなと適当に解釈した結果、スペインのあの薄い生ハムは日本では高いので目玉焼きの隣でベーコンを焼いて一緒に入れるようにしていました。
つまり私が作っていたのはHuevos rotosと言うよりかは、ベーコンエッグにホクホクジャガイモを混ぜたようなアメリカ人が朝食に食べてそうなものです。
作る時間も数分で済むので何度も作っていたのですが、画像を見ていると何かおかしいと思って殊勝にもスペイン語サイトでレシピを探してみるとジャガイモも卵もフライにしている…
本物のHuevos rotosレシピ:https://www.directoalpaladar.com/recetas-de-huevos-y-tortillas/huevos-rotos-1
上記のサイトには料理の起源も書いていて、どうやらMadridにあるCasa Lucioというお店から有名になったそう。
画像検索してみると本物(?)のHuevos rotosはrotosと言うだけあって想像よりぐちゃぐちゃ…
Casa Lucioのものはもう少し卵が生っぽいですが、一応参考に一般的な写真を貼っておきます。
レシピはyoutubeでも沢山紹介されていて、作るコツは卵をフライする部分にあるそうで意外とテクニックがいるそう。
卵がフライパンに張り付かないように油の温度を上げておくのがコツなよーです。
どうみても動画ではオリーブオイルを大盤振る舞いしているので高級料理にしか見えないのですが、これを日常的に食べれるのはオリーブオイル王国ならではなのだろうか?…
もう少しこの料理の起源探しをしてみると、どうやらこの卵をフライする調理は17世紀のベラスケスの絵画に既に登場していたようです。
Huevos rotos ベラスケス説:https://www.recetasderechupete.com/huevos-rotos-o-estrellados-origen-y-recetas/26975/
現在のHuevos rotosレシピを作ったLucioさん曰くお婆さんが地面に落とした卵を拾って自分のジャガイモにぶっかけてたのがきっかけと言うだけあって、ベラスケスの絵も老婆と卵の組み合わせなのは偶然なんだろうか…
因みにスペイン語では何故かHuevos rotos o estrelladosと表記されることが多くて、
rotos ≒ estrellados ≒ 崩れた/壊れた
と懲りずに再び適当に推測していたら”uno de los platos estrella en toda España.”で完全に混乱しました。
要するにスペイン語には下記のような単語があるそうです。
estrella (名:star)
estrellado (形:starry / smashed)
estrellarse(動:to smash / to crash)
roto (形:broken / 動:break romper過去進行)
や、ややこしい…
このベラスケスの絵の情景(?)解説ではスペイン語wikiには卵のフライであることを疑っていないのに英語版では茹でている可能性が指摘されています。
スペイン語wiki : https://es.wikipedia.org/wiki/Vieja_friendo_huevos
英語wiki : https://en.wikipedia.org/wiki/Old_Woman_Frying_Eggs
そして日本語のブログでは私と同じく(?)卵を焼いていると表現しているサイトがすぐに見つかります。
映画とドラマと語学 : http://loro2012.blog.fc2.com/blog-entry-854.html?sp
この辺に言葉の表現と習慣の違いが浮き上がっているような感じがしてとても面白かったです。
蛇足ですが、日本ではフライしないようなものをフライする他の例では日高シェフの動画に出てくるトマト缶をオリーブオイルでフライする手法を思い出しました。
ところでベラスケスの絵が写実的だとすると、youtubeの調理動画から言ってpotの中の卵は投入して1-2秒ぐらいに見えます。
老婆が手に持っている3つ目の卵も他の卵と一緒にフライにするとしたら、老婆の目線が卵に無いのは変に思えます。
老婆は手に持った卵をどうするつもりだったのか…
ベラスケス 宮廷のなかの革命者 (岩波新書) [ 大高保二郎 ] |